抄録
von Recklinghausen病(以下VRD)に合併したまれな直腸癌の1例を経験した。症例は67歳男性で,20歳頃より皮膚腫瘤に気づいた。家族歴は次女にVRDの疑いあり。健診での便潜血陽性の精査を主訴に来院。全身に皮膚腫瘤および“café au lait spot”を認め,皮膚生検で神経線維腫を確認した。大腸内視鏡および注腸造影検査でRa領域に径約3.5cmの2型直腸癌を認め,低位前方切除術が施行された。病理所見はn1s1p0h0(Stage Ⅲ)で,組織学的には中分化型腺癌であった。同時に直腸から横行結腸に6個の多発ポリープを認め,組織学的には腺管腺腫および絨毛腺管腺腫であった。なお,腹腔内には神経線維腫の存在などの異常所見は認めなかった。文献的に検索しえたVRD合併大腸癌17例について検討したところ,非合併大腸癌の臨床像とほぼ類似していたが,大腸神経線維腫併存例が1例に認められた。合併病因はいまだ不明で,今後遺伝子的検索を含めた症例の蓄積が望まれる。