消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
食道静脈瘤出血に対する内視鏡的治療の検討―最近5年間の治療成績―
中村 真一光永 篤星野 容子岸野 真衣子小西 洋之村田 洋子鈴木 茂林 直諒
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2000 年 57 巻 2 号 p. 24-28

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抄録

 1995年1月から1999年12月の5年間に内視鏡的止血治療を施行した食道静脈瘤出血120例(Lg-cを含む)の治療状況と累積非再出血率,生存率をretrospectiveに検討した。男性87例,女性33例,平均年齢は59.5歳で,出血部位は食道96例,Lg-c24例であった。初期止血法は内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)70例(58.3%),内視鏡的硬化療法(EIS)32例(26.7%),Histoacrylによる硬化療法18例(15.0%)であった。食道出血の67.7%にEVLが,Lg-c出血の54.1%にHistoacrylによる硬化療法が施行された。2例(1.7%)の止血困難例を認めた。3年累積非再出血率は内視鏡的治療法,Child-Pugh分類による肝機能,静脈瘤形態や出血部位では有意差は認めなかった。肝癌合併では肝癌有は45.5%で有意に低かった(P<0.05)。3年生存率は内視鏡的治療法ではEISは65.6%で有意に高かった(P<0.05)。肝機能ではChild-Pugh分類Cは13.7%で,肝癌合併では肝癌有は25.3%で有意に低く(P<0.05),Child-Pugh分類C肝癌有は極めて低かった(P<0.05)。出血例に対する治療法として,約60%の症例にEVLが施行され,第1選択となっている。Lg-cや止血困難例に対しHistoacrylによる硬化療法が有用である。再出血や予後に与える背景に関しては基礎肝機能および肝癌合併の要因が重要である。

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© 2000 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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