日本歯周病学会会誌
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原著
一般歯科医院におけるメインテナンス治療の長期効果に関する研究
—歯科衛生士を中心としたSPTの評価—
人見 早苗石幡 浩志猪股 裕士島内 英俊
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2006 年 48 巻 2 号 p. 123-134

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抄録

本研究は,一般歯科における歯周炎患者の長期メインテナンスに対し,歯科衛生士が積極的に関わるSPTの効果を検証したものである。一般開業医を受診した慢性辺縁性歯周炎の患者40名 (男性16名,女性24名) を対象とし,積極的歯周治療を行った後,4年以上にわたり同一の歯科衛生士が担当するSPTを実施した。患者の初診時の年齢平均は54.1歳 (37-68歳) であった。初診時における総被験歯数は1,010歯であった。初診時,歯周基本治療終了時,SPT開始時およびその1-5年目の時点で診査を実施し,診査項目はプロービングポケット深さ (PPD) ,プロービング時の出血 (BOP) ,O’Learyのプラークコントロールレコード (PCR) ,根分岐部病変,残存歯数,歯の喪失状況および補綴物の装着状況を記録した。メインテナンス期においてPPDが5 mm以上,あるいは歯周膿瘍を形成した部位を再発率として算出した。メインテナンス期におけるPCR平均値は20%未満にて推移し,PPDおよびBOPについてはSPT開始時と比較して有意な変動はみられなかった。また,歯周外科処置 (N=14) および非外科処置被験者群間 (N=26) で有意差は認められなかった。ただし,歯周外科処置被験者群における口腔内ではSPT開始後1-2年の間,外科処置歯群は非外科処置歯群に比べPPDおよびBOPの値が有意に高値を示した。再発率はメインテナンス期を通じて2%を推移した。補綴物装着歯数および歯周組織診査項目間に明確な関連はみられなかった。以上により,一般的な歯科診療所において歯科衛生士が積極的に関わるSPTが有効であることが示された。

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© 2006 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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