はじめに
喫煙習慣が,肺癌や咽頭癌,循環器系,呼吸器系疾患の原因であることは現在周知の事実であり,禁煙は個人が留意することで疾患罹患リスクを減らすことができる方法である。1965(昭和40年)年の成人男性平均喫煙率は82.3%(日本専売公社調べ:http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html)であったが,2016(平成28年)年には29.7%(JT調べ:URLは日本専売公社調べと同じ)に減少した。これは世界的なタバコ規制や啓蒙活動の成果であり,2020年の東京オリンピック開催に向けて,我が国でもより一層のタバコ規制が継続されることが予想される。
歯周病の病態形成における多数のリスク因子が疫学的な研究などを通じて明らかになっている1,2)。そのなかでも喫煙は改善可能なリスク因子であり,歯周病治療の現場においても禁煙指導が広く行われ,日本歯周病学会も2004年に禁煙宣言という形で積極的な禁煙活動を行うことを宣言している。喫煙と歯周病との関連を示す疫学的な研究としては喫煙量と歯周病重症度との間に正の相関があること3)や,喫煙により重度の歯周病に罹患するリスクが上昇するとの報告がある4)。また喫煙することにより歯肉溝浸出液中のサイトカイン濃度が変化すること5)や,多形核白血球の貪食能が減弱すること6)から,喫煙によって口腔の免疫機能が修飾されていることが示唆されている。喫煙の歯周組織に対する影響については,以前の日本歯周病学会会誌において優れた総説7)やポジションペーパー8)で詳説されているためそちらを参照していただき,本稿では1.タバコ煙主成分の一つであるニコチンが抗原提示細胞である樹状細胞(dendritic cells:DC)の免疫機能に及ぼす影響,2.マウス実験的歯周病モデルにおけるタバコ煙成分の影響について概説する。
ニコチン様アセチルコリンレセプター
タバコ煙は4,000種以上の化学物質で構成されており,有害物質は200種以上,発ガン物質は60種程度含有する。その中でもニコチンはタバコ煙の粒子相・ガス相のいずれにおいても高比率で含まれている主成分である。ニコチンは神経伝達物質であり,イオンチャネル型のレセプターであるニコチン様アセチルコリンレセプター(nicotinic acetylcholine receptor:nAChR)に結合する。nAChRはα1~10,β1~4,γ,δ,εなど多数のサブユニットが単独,もしくは複数のサブユニットの組み合わさることによって5量体を形成し,主に神経筋接合部におけるシグナル伝達に関与している9)。我々が研究を開始する以前の2003年,nAChRα7サブユニットを介したアセチルコリンの刺激がマクロファージにおけるTNF-α産生に関与していることが報告され10),ニコチンも免疫担当細胞に対して直接的な影響を与える可能性が示唆された。そこで我々は,CD14陽性単球と,CD14陽性単球をIL-4,GM-CSF存在下で培養することによって得られる単球由来樹状細胞(monocyte-derived dendritic cells:moDC)においてnAChRのα1~7,β2およびβ4サブユニットのmRNAの発現と,ニコチン刺激により単球・moDC内のカルシウムイオン濃度が一過性に上昇したことを確認した(図1)。すなわち,ヒト単球では機能的なnAChRが発現していることが明らかとなった11)。
ニコチンが樹状細胞の免疫機能に及ぼす影響
免疫担当細胞は相互に機能制御を行いながら人体の恒常性維持に関与していると考えられている。近年,樹状細胞(dendritic cell:DC)が免疫担当細胞による免疫制御において中心的な役割を果たしていることが明らかになりつつある。抗原提示細胞である樹状細胞は大まかには単球から分化し,未成熟な状態で表皮や粘膜に存在している。末梢に存在する未成熟樹状細胞は高い抗原貪食能を有しており,外来異物などの抗原を取り込むと活性化されリンパ節への遊走活性が上昇し,リンパ節へと遊走する過程において成熟樹状細胞へと分化する12,13)。リンパ節に到達した成熟樹状細胞は貪食した抗原を消化分解し,主にリンパ節のT細胞領域でナイーブT細胞に対して抗原提示を行う。さらに引き続いてヘルパーT細胞への分化の誘導,サイトカインの産生により外来抗原に対する獲得免疫が活性化される14,15)。このように樹状細胞は自然免疫から獲得免疫への橋渡しを行う中心的な役割を担っており,歯周組織において恒常性維持のみならず歯周病の病態形成においても樹状細胞は重要な役割を担っていることと考えられる。歯周病と樹状細胞との関連については,歯周病病変部の粘膜固有層に樹状細胞が集積していることや,病変部の樹状細胞の周囲にT細胞が集積していることが報告されている16,17)。しかしながらこれらの報告は主に病理組織的な解析によるものであり,歯周病病態形成における樹状細胞の関与を機能的に検討した報告は皆無に近い。その理由として,歯周病病変部から単離することのできる樹状細胞数が非常に限られていることや,樹状細胞には多くのサブタイプが存在することから,歯周組織に限らずヒト組織由来樹状細胞の免疫機能の解析が困難であることが挙げられる。そのため様々な病態における樹状細胞の機能を検討する際には,主に樹状細胞の前駆細胞である単球をサイトカイン存在下において単球由来樹状細胞(moDC)へと分化を誘導し18,19),moDCの機能を検討することが一般的である。
一方,喫煙習慣と様々な全身疾患の罹患率増加には相関性があり,その一因として慢性的なタバコ煙吸引による免疫機能の変化が関与していると認識されたのは1960年代である20)。その後,慢性閉塞性肺疾患の病態解明のため肺胞マクロファージや好中球に対するニコチン・タバコ煙抽出物(cigarette smoke extracts:CSE)の影響について研究が進められてきた。また慢性的なニコチン処理によりT細胞アナジーが誘導されることが報告された21)。樹状細胞の免疫機能に及ぼすニコチン・CSEの影響については,2003年にNouri-ShiraziらとAicherらがヒト単球から分化させたDCを用いた検討を行った22,23)。Nouri-ShiraziらはニコチンをDC分化後あるいは分化時に添加し,DCをLPSで刺激した際のIL-12の産生,T細胞増殖活性,T細胞からのIFN-γ産生を検討し,コントロール群と比較してこれらの機能が抑制されることを報告した22,24)。一方,Aicherらの報告ではニコチン刺激のみでDCからのIL-12産生,CD54,CD86,HLA-DRといった表面抗原の発現,T細胞増殖活性をそれぞれ増強するという結論であり23),この2グループの示した結果は相反するものであった。Vassalloらは,ニコチンはDCの免疫機能に関与しないものの,CSE存在下のDCにおいてLPS刺激にて誘導されるIL-12産生量の減少とIL-10産生量の増強,CD40,CD80,CD86発現及びT細胞増殖活性の減弱,ERK依存的なIL-12/IL-23の発現の減少を報告した25-27)。
マウスを用いた系では,DCへの分化過程でニコチンが存在すると,IL-12産生が減弱し,T細胞からのIFN-γ産生が抑制された28)。骨髄由来分化DCをCSEで刺激するとケモカインCCL3,CXCL2産生誘導,CD4陽性T細胞の増殖活性が減弱される一方,CD8陽性T細胞の増殖活性が増強された29)。また骨髄由来DCをニコチンで刺激すると,CD80,CD86,MHC class I・class IIの発現上昇とT細胞増殖活性の増強,抗癌作用が認められたとの報告もある30)。以上より,ニコチンにより免疫応答がTh1型あるいはTh2型のどちらも制御されうること,ニコチン単独ではDCの機能に変化を及ぼさないもののCSE存在下ではDCの免疫応答はTh2型を示すなど,はっきりとした統一見解は得られていない。しかしながら,ニコチンを含めたタバコ煙そのものがDCの機能修飾になんらかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。
そこで我々は,喫煙習慣を持つ歯周病患者の病態が非喫煙患者よりも重篤であることの一因は,喫煙による免疫系の撹乱であると仮説をたて,抗原提示細胞の分化過程においてニコチンの存在がいかなる影響を及ぼすかを検討した。すなわち,ニコチン存在下でCD14陽性単球を分化させて得られたDCの性質変化を検討することにした。GM-CSFとIL-4存在下で分化させたDCをmoDC,ニコチン存在下GM-CSFとIL-4で分化させたDCをNiDC(Nicotine-DC)として,LPS刺激によるDCのサイトカイン産生を検討したところ,moDCと比較してNiDCからのIL-12産生量が有意に抑制された。次にDCの抗原提示能を検討するためにナイーブCD4陽性T細胞の増殖活性を調べると,NiDCでは増殖が有意に抑制された。DCと共培養したT細胞を,CD3/CD28で再刺激した際のサイトカイン産生をELISAにて測定したところ,moDCと比較してNiDCではIFN-γ産生の減弱とIL-5/IL-10産生の増強を認めた。NiDCとmoDCの表面抗原の相違を検討するため,DCの膜表面の抗原提示分子,抑制性共刺激分子の発現変化をFACSにて解析すると,NiDCにおいて抑制性共刺激分子であるPD-L1,ILT3,ILT4の発現が高かった。NiDCの分化過程においてニコチンのnAChRへの結合を阻害するために,nAChRの非選択的アンタゴニストであるd-tubocrarineで単球を前処理した。その結果,d-tubocurarine処理したNiDCからのIL-12産生量と,共培養したT細胞からのIFN-γ産生量は未処理NiDCと比較して増強した。以上のことから,樹状細胞への分化の過程でニコチンが存在することにより,Th1/Th2偏向を制御(Th2へのシフト)すること,NiDCは抑制性共刺激分子を強く発現していること,ニコチンによるシグナルはnAChRを介していることが明らかになった31,32)。
転写因子NF-κBは免疫系細胞の成熟・分化,炎症反応等に重要な役割を果たしている33)。同じく転写因子であるperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)-γはNF-κBを介したシグナルを負に制御することが知られている34,35)。興味深いことにNiDCはmoDCと比較してPPAR-γとその関連遺伝子が強く発現していた。PPAR-γ発現は,d-tubocurarine処理により抑制されることからニコチンはnAChRを介してPPAR-γとその関連遺伝子の発現を上昇させ,IL-12やIFNγの産生量を減弱させることが明らかになった31)。PPAR-γの活性化はヒト単球をM2マクロファージへと分化させること36)も報告されていることから,ニコチンはnAChRを介してヒト単球からTh2型免疫応答を誘導する樹状細胞へと分化させることが強く示唆された。
我々は単球からマクロファージへの分化過程におけるニコチンの役割に関しても検討した(我々の報告から5年後,後述のようにマクロファージの分類が変更されたため本稿では詳細は示さない)。免疫担当細胞の1つであるマクロファージには炎症を惹起して感染異物を排除する1型マクロファージの他に,2型マクロファージが存在し,抗炎症作用や異物排除後の創傷治癒機転において成長因子や細胞外基質の生成や分解を調節する酵素類を産生することが報告されている37)。すなわち,本来炎症を惹起して外来異物の侵入を感知・排除する役割を担うと考えられてきた免疫担当細胞が,異物排除後の局所組織の創傷治癒にも関与することが近年明らかとなりつつある。GM-CSFで分化させた1型マクロファージはIL-12highIL-10lowでTh1型を,M-CSFで分化させた2型マクロファージはIL-10highIL-12-でTh2型免疫応答を誘導する38)(2014年にImmunity誌で,マクロファージの分類が整理された39)。現在では単球をGM-CSFで分化させた細胞には樹状細胞も含まれることが示されており40),単球をM-CSFで分化させた細胞はM1/M2に分化する前段階のM0マクロファージに分類されている)。興味深いことにGM-CSFにニコチンを加えてマクロファージに分化させると1型マクロファージは2型マクロファージに類似した形質に性質を偏向させた41)。DCとマクロファージの分化に及ぼすニコチンの影響についての検討を通して,ニコチンは免疫応答をTh2型にシフトさせると我々は考えている。健常者において歯肉溝滲出液を介したimmuno-surveillanceが機能しているが,喫煙者ではニコチンによる血管収縮作用により末梢の炎症病変部での血液循環の不全,それに伴う歯周組織局所への免疫担当細胞の遊走数の低下,さらにTh2型免疫応答の誘導による貪食細胞の活性低下・炎症の遷延化など,局所性のみならず全身性の免疫機能の低下により,非喫煙者よりも歯周病変の進行・悪化が顕著となる傾向を示すと考えられる。
マウス実験的歯周炎モデルにおけるタバコ煙構成成分の影響
喫煙者の歯周病病態増悪,治癒遅延,再生療法の効果減少を示す臨床研究報告は数多く存在するものの,実際の喫煙者の生体内変化を検討するために必要と思われる実験動物での歯周炎発症から治癒に至るモデルの構築はなされていない。喫煙がヒト体内に及ぼす影響としては,口腔,鼻腔,気管支,肺にタバコ煙が直接曝露し,局所粘膜の損傷,機能障害といった直接的な為害性と,粘膜面や末梢血液からタバコ煙成分が吸収され,全身的にタバコ煙成分が循環することにより,ヒト体内に為害性を及ぼす間接的な作用があげられる。喫煙の影響を検討するにあたり,タバコ煙を吸入させる環境が喫煙の体内に及ぼす直接的・間接的作用の解析には動物実験が最も適している。しかしながら,このような喫煙動物実験モデルを作製するための環境整備が容易でないため,その代替策としてタバコ煙を専用機器で捕集しdimethyl sulfoxideに溶媒転換しているもの(cigarette smoke condensate:CSC)が多くの喫煙の影響を評価する研究で用いられている42,43)。そこで我々の研究においてもCSCを実験に供することとした。また,タバコ煙成分中,ニコチンはタバコ煙のガス相・粒子相共に多く含有されており,その為害作用の強さからさまざまな疾患に対して喫煙が及ぼす影響を検討する際に最も注目されている物質である。これまでラットを用いた絹糸結紮による実験的歯周炎モデルにおいて,タバコ煙を吸引させる系44),ニコチンを投与する系45-47)を用いて,タバコ煙成分が歯槽骨吸収に及ぼす影響について報告されている。しかし,喫煙で発生したタバコ煙成分が体内に吸収された後にどのようなメカニズムを介して歯周組織の破壊に関与するかは明らかになっていない。そこで,マウス実験的歯周炎モデルにCSCあるいはニコチンを腹腔内投与,すなわち喫煙により体内に吸収されたタバコ煙成分が歯周組織の破壊に及ぼす影響について検討した。3日間ニコチンあるいはCSCを腹腔投与したのち,Abeらの方法48)に従い絹糸をマウス上顎左側第二臼歯周囲を結紮した状態で7日間経過させることで,マウス実験的歯周炎モデルを作製した。なお,実験群に前投与したCSC内に含まれるニコチン量はもう一方の実験群として前投与したニコチンの投与量に一致させた。その結果,PBSを前投与した対照群の結紮側と比較して,CSCまたはニコチンを前投与した実験群では歯槽骨吸収が有意に増加した49)。CSCあるいはニコチンを前投与した群での結紮側における歯槽骨吸収量を群間で比較すると統計学的に有意な差は認められなかった49)。また,組織学的な検討によりPBSを前投与した対照群と比較して,CSCまたはニコチンを前投与した実験群では結紮側において有意に破骨細胞数が増加したことが明らかになった。そこで所属リンパ節である顎下リンパ節において破骨細胞分化因子であるreceptor activator of NF-kB ligand(RANKL)の遺伝子発現を検討した。その結果,PBSを前投与した対照群と比較してCSCあるいはニコチンを前投与した実験群においてRankl遺伝子発現が有意に上昇していた49)。これらの結果から,絹糸結紮により付着したプラークによる細菌感染やメカニカルストレスに起因する歯周組織での炎症の惹起,さらにその局所情報を抗原提示細胞が感知し,所属リンパ節に遊走することにより伝達し,顎下リンパ節におけるRankl遺伝子発現を上昇させ,そのRankl遺伝子発現の増強により結紮側での破骨細胞の分化を誘導するが,CSCまたはニコチンの前投与により破骨細胞への分化誘導がより促進されることが示唆された。そこで,タバコ煙成分が破骨細胞への分化誘導に及ぼす影響を,RANKL存在下で破骨細胞へと分化誘導されるRAW264.7細胞を用いて検討を行った結果,CSCまたはニコチン存在下では分化誘導されたTRAP染色陽性細胞,すなわち破骨細胞が増加していた(未発表データ)。
ニコチン投与が歯槽骨治癒機転における歯槽骨の回復に及ぼす影響
マウス実験的歯周炎モデルの予備実験において8-10日では絹糸が脱離すること,7日目とそれ以降では骨吸収量に変化が認められないことからマウス実験的歯周炎モデルにおいて,絹糸結紮期間を7日に設定した。また絹糸が脱離すると,破壊された歯周組織が治癒機転に転じその後10日前後で結紮前と同程度の歯槽骨レベルに回復する。一方,喫煙者の歯周治療が奏功しにくいことは,多くの疫学的研究によって明らかであるが,実験動物における歯周組織治癒モデルはほとんど報告されていない。そこでマウス実験的歯周炎モデルにおいて,喫煙歯周病患者を想定し歯槽骨治癒機転でさらにニコチン等のタバコ煙成分を投与した。すなわちまず,マウスをPBS投与群とニコチン投与群に分けて腹腔内投与後,上記と同様の部位に絹糸を結紮し,結紮後7日目に絹糸を除去した。絹糸除去後に,再度ニコチンあるいはPBSを投与し,絹糸結紮除去後10日目(結紮開始から17日目)に歯周組織をマイクロCTで観察し,歯槽骨の回復量を測定した。その結果,絹糸除去後,PBS投与群と比較して,ニコチン投与群において歯槽骨の回復が有意に抑制された49)(図2)。すなわち,絹糸除去後のニコチンの全身投与は破壊された歯周組織の治癒・回復を遅滞させることが示唆された。
マウス歯周病モデルやニコチンの腹腔投与は喫煙習慣を有する歯周病患者の病態を正確に反映しているわけではない。しかしながら,実験動物レベルでの喫煙関連歯周炎の病態形成メカニズムの解析は必要であり,ヒト喫煙者の歯周病形成に類似した動物モデルの作成が望まれる。喫煙による歯周病の進行を促進するリスクの増大,特に歯槽骨吸収に関しては炎症とともに骨のリモデリングも複合的に作用することで生じていると考えられる。喫煙は歯周病の進行,歯周再生治療の効果不奏功のみならず,体躯全般の骨折治癒にも負の影響を及ぼすことが整形外科分野で明らかになっているため50),口腔局所のみならず,骨の健康問題としても捉えていく必要があると思われる。
最後に
現在,喫煙習慣は多くの疾患発症リスクを上昇させることが明らかになっている。また,2016年の成人男性の喫煙率は2000年と比較して半減した。官公庁,大学,病院をはじめとした公共の場での喫煙場所は年々少なくなっている。筆者が昨冬行った大阪大学歯学部学生へのアンケートでは,喫煙者が皆無との結果を得た。学生や若い歯科医師にとっては物心がついた時から,喫煙は健康を害する悪であり,喫煙することが理解できないとの感想も多く得た。かつて社会に許容されていた嗜好習慣が,一世代の間で大きく変化したことを再認識させられた一方,筆者は若い歯科医師や歯科衛生士のいささか一方的な禁煙指導に違和感を感じていた。歯周病治療を行うにあたり,歯科医師と患者との関わりは長期にわたる。過去の生活習慣を現在の常識・考えをもとに断罪するのではなく,患者のこれまでの人生・エピソードに寄り添ったアプローチが医療人には必要であると思われる。
謝辞
稿を終えるにあたり,研究をご指導いただきました村上伸也教授に心から感謝いたします。また,本実験の遂行にあたり,協力していただいた大阪大学大学院歯学研究科口腔治療学教室の皆様に深く感謝いたします。特に免疫担当細胞に関する研究は小林良平博士,マウス実験的歯周病モデルの研究は久保田(菅波)実木子博士の尽力のもと進めることができました。
本研究の一部は日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号17791554,23659975,17K11985)の助成を受けて行われた。
本論文の要旨は第60回春季日本歯周病学会学術大会(2017年5月12日福岡)において発表した。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。
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