日本歯周病学会会誌
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症例報告
矯正治療による埋伏歯,低位唇側転位歯牽引での付着歯肉獲得について―早期の歯肉移植により安定した付着歯肉の獲得を得られた2症例―
窪田 道男長島 由紀
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2017 年 59 巻 3 号 p. 161-171

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抄録

埋伏歯の位置によっては,付着歯肉の欠如している歯肉からの牽引が必要となる。今回,我々は,埋伏歯症例と低位唇側転位歯症例の2症例について,牽引途中での遊離歯肉移植を行い歯肉退縮の予防と安定した付着歯肉の獲得が得られたので報告する。症例1は,初診時17歳男性,軽度歯肉炎,上顎左側中切歯逆性埋伏,重度叢生を有していた。治療は,歯肉炎に対し歯周基本治療,埋伏歯,叢生に対しての矯正治療,埋伏歯歯冠の外科的開窓術と当該歯の付着歯肉獲得のための遊離歯肉移植の順で施行した。埋伏歯は,矯正治療による牽引により,唇側歯頚部への遊離歯肉移植を行える程歯冠が萌出した時点で,歯肉移植を施行した。その後,逆性埋伏中切歯は適正な位置に配列され,周囲付着歯肉の十分な幅も獲得された。症例2は,16歳女性,限局性歯周炎,骨格性上顎前突症,下顎前歯重度叢生とその叢生による下顎左側中切歯の歯肉退縮を有していた。この症例も同様の順序で治療を進めた。特に,歯肉移植のタイミングが重要であり,下顎前歯叢生のレベリングが完了した時点で歯周外科処置を行った。両症例とも,埋伏歯,転位歯を矯正力により牽引誘導する途中で,欠如する付着歯肉を獲得するため遊離歯肉移植を行い,その後の継続する矯正治療による歯肉退縮の予防ができた。また,症例2は圧下力による歯肉退縮の改善が得られた。

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