1989 年 31 巻 3 号 p. 948-959
本研究の目的は, ポリリン酸ナトリウム1%配合歯磨剤の歯石形成予防 (ターター・コントロール) 効果をピロリン酸ナトリウム5%配合の米国市販品A歯磨剤およびPlacebo歯磨剤を対照として, 二重盲検法にて臨床的に比較検討することである。某社従業員329名より歯石付着のみられる184名を選出し, 次に層別のため一旦スケーリングを実施したのち, 有効成分を含まない一般歯磨剤を4週間使用させ, 各人の歯石形成能を測定した。ここで得られた148名から均質な3群を形成し, 再びスケーリングを実施したのち, それぞれに, ポリリン酸ナトリウム配合歯磨剤 (50名), A歯磨剤 (48名) およびPlacebo歯磨剤 (50名) を与えた。診査は, 4週および12週目に下顎前歯舌側部に形成された歯石をVMIndexにて評価した。その結果, 最終の12週目で, ポリリン酸ナトリウム配合歯磨剤は, A歯磨剤およびPlacebo歯磨剤に比べ危険率1%で, また, A歯磨剤はPlacebo歯磨剤に比べ危険率1%で有意に歯石形成を抑制していることが判明した。Placebo歯磨剤に対する歯石形成の抑制率は, 歯石の形成しやすいグループにおいて, ピロリン酸ナトリウム配合のA歯磨剤は9.0%であったのに対して, ポリリン酸ナトリウム配合歯磨剤は30.1%であった。