パーソナリティ研究
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原著
新入生における大学環境への主観的適応に関するPAC(個人別態度構造)分析
大久保 智生
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2004 年 13 巻 1 号 p. 44-57

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抄録

本研究の目的は,個人-環境の適合性の視点から,大学生の主観的適応をPAC(個人別態度構造)分析を用いて,検討することであった.調査対象者は,大学新入生男女2名である.1名は大学環境に適応している学生であり,もう1名は大学環境に適応していない学生であった.2人の結果を比較すると,主観的適応の構造とその意味づけに違いがみられた.調査対象者Aの事例では,大学環境は肯定的に意味づけられており,大学環境と調和した形で欲求が充足されていると解釈された.一方,調査対象者Bの事例では,他の環境に比べて大学環境は否定的に意味づけられており,大学環境で欲求は充足されていないと解釈された.また,適応するのに容易な特徴という実体はなく,環境との関係によって個人の特徴の価値が決まり,個人の特徴と環境との関係によって適応は決まるのではないかと考えられた.最後に,個人-環境の適合性の視点から,適応研究を進めていく必要性が論じられた.

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© 2004 日本パーソナリティ心理学会
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