2008 年 16 巻 2 号 p. 185-197
本研究では,主張性の4要件理論(渡部,2006)に基づいて開発された主張性尺度を用いて,主張性と社会的情報処理および精神的適応との関連を検討した。大学生・大学院生359名に質問紙調査を行なった。パス解析を実施した結果,主張性の4要件それぞれが社会的情報処理の各ステップに異なる影響を及ぼしていることが明らかになった。また,4要件のうち第3要件の他者配慮が精神的不健康を増大させ,第4要件の主体性が孤独感を減少させていることが示された。本研究の結果から,主張性の第1要件である素直な表現と第3要件である他者配慮が行動の方向性を決め,第2要件である情動制御が行動を調整し,第4要件である主体性が積極性を増幅させることが示唆された。今後は4要件がそれぞれどの程度の高さであれば適応的であるのかを明らかにすることが求められる。