パーソナリティ研究
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特集論文
「自己の二重性の意識化」としての自我体験
――体験者の語りを手がかりに
清水 亜紀子
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2009 年 17 巻 3 号 p. 231-249

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抄録

本研究では,自我体験の「体験内容」・「体験の位置づけ方」の類型化を試みる。そこで,25名の被調査者を対象に,自我体験に関する個別面接調査を実施した。得られた語りを分析した結果,自我体験の体験内容は,時間軸・空間軸への問い,存在への感覚的違和,自・他の実在への懐疑,独一性への気付きの4つに分類された。また現時点での自我体験の位置づけ方は,個人史再編成,体験同化,意味づけ途上,体験疎外の4つに分類された。特に,個人史再編成では,新たな自己が生成される一方で,体験疎外では,旧来の自己のあり方を堅持しようする様子がみて取られた。さらに,事例的検討から,自我体験とは,「第二の私」が「今ここの私」として生きるという新たな自己の成立の契機的体験であり,その体験をいかに受けとめるかによって,「今ここの私」を根底から崩すものにも,支えてくれるものにもなりえるパラドキシカルな体験なのではないかと考えられた。

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© 2009 日本パーソナリティ心理学会
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