本研究の目的は,中学1年生を対象として,共感概念の重要要素間の関係を検討することである。ビデオ刺激を用いて中学1年生男女の共感を喚起し,質問紙尺度を使って,共感概念の重要要素である役割取得(相手の立場に立って気持ちを想像すること)と並行的感情反応(相手と同じ感情が生じること),他者指向的反応,感情理解の測定を行った。変数間の関係を男女別に検討すると,男女ともに役割取得と並行的感情反応,感情理解は他者指向的反応に有意な影響を与えていた。並行的感情反応と感情理解は他者指向的反応を誘発しうる,または高めうることが示唆された。また,女子のみ役割取得は並行的感情反応にも有意な影響を与えた。役割取得が感情理解に与える影響は有意とならなかった。感情理解については,その理由についてもたずねたところ,回答から,「状況」を手がかりとして主人公の感情を理解した場合が多いことが示唆された。