1989 年 37 巻 2 号 p. 76-79
現在,はねかえり係数は,衝突問題を解くのに運動量保存則と並列して使うための数学的手段として,生徒に認識されているきらいがある。そこには,物理的な現象としての衝突のイメージがほとんどない。また,生徒は「力学的エネルギーは弾性衝突のときしか保存されない」ということを暗記するが,一方で「衝突がどのようなものであっても運動量mvは保存されるのに,運動エネルギーmv^2/2は特別なときしか保存されない,というのは合点がゆかない」と言う。これらの問題を改善するため,はねかえり係数を用いないで,弾性衝突と非弾性衝突との違い,衝突時のエネルギー保存の問題などを指導する授業展開を考えてみた。