アメリカでは90年代はじめから数学教育、理科教育の基準の設定とその実施をめぐり教師、教育関係者のみならず、生徒の父兄から数学者、科学者をも巻き込んだ争いが続いている。新しい教育観に基づいた基準の強制的な実施が生徒達の深刻な学力低下をもたらしたと受け取っている親達はいたるところでこの「新しい教育」の廃棄と「伝統的な教育」に立ち返ることを求め組織的な運動を展開している。この発表はアメリカにおけるこのような動きを検討し、「新しい教育観」のもとになっている考え方を分析し、さらに日本における「新しい教育観」とその上に造られたわが国の教育基準、すなわち「小学校学習指導要領」に対する著者の分析とその日本の将来への影響について論ずる。