2014 年 10 巻 p. 163-180
オランダにおける1990年税制改革では,社会保険料と所得税の制度的「統合」が行われた。本稿は,この税と保険料が統合された背景を明らかにし,統合の意義について考察することを目的としている。この統合は保険料と税の一元徴収というだけでなく,課税ベースや税率構造といった点までをも統合したことが特徴として挙げられる。税改正は狭い課税ベースの是正が課題であった。さらに,パートタイム労働を積極的に推進した労働政策によって稼得世帯モデルが変化してきたことで,従来の税制と社会保険料制度に不満が出てきていた。この統合に加えて,社会保険料の事業主負担分が被用者負担となった。そのため「調整加給金」という新たな制度が導入され,使用者はそれまでの負担分に相当する額を被用者に対して賃金に上乗せする形で補償しなければならなくなった。