2017 年 13 巻 p. 156-176
本稿では,所得税および住民税において2011年以降実施された年少扶養控除廃止・特定扶養控除縮減による実質的な増税が,家計の消費行動に与えた影響について,「日本家計パネル調査(Japan Household Panel Survey:JHPS)」の個票パネルデータを用いて検証する。分析では,JHPSで調査している1月の非耐久消費財の支出額(食料費,外食・給食費,光熱・水道代,交通費の4項目,それらの合計額)と1月分の増税額の関係を検証した。その結果,すべての分析結果において増税によって家計の消費は変化しないことを支持する結果が得られた。これは,家計が恒常所得仮説に従い,増税に対して消費の平準化を行って消費水準を変えなかったことを示唆するものである。