地方財政のテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例としてあげられる。ただし,その前提は土地に対する課税であることだ。しかし実際のところ,日本の固定資産税は土地に加えて,家屋や機械設備等,償却資産をその対象に含む。とくに償却資産に対する課税は,固定資産税に法人税とは異なる形での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査および経済センサス活動調査(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて,固定資産税の償却資産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定結果からは,固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっている)こと,とくに流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。