2022 年 18 巻 p. 172-195
本稿では,年齢階級別の視点から限界的消費税改革を評価することを目的として,DCD曲線を用いて分析を行った。「保健医療」の減税と他の費目の増税を組み合わせた限界的消費税改革のシミュレーション分析を行った点が本稿の大きな特徴である。分析の結果,所得階級別と年齢階級別では,望ましい限界的消費税改革が異なることが検証された。とくに,年齢階級別において「保健医療」を減税する場合,「食料」「家具家事用品」「教養娯楽」「その他の消費支出」の増税による組み合わせが望ましいことが明らかになった。
本稿の分析結果より,今後,少子高齢化社会において年齢階級別の視点から低所得者世帯を対象として必需品と考えられる「保健医療」を減税できるのであれば,「食料」「家具家事用品」「教養娯楽」「その他の消費支出」のいずれの増税も望ましく,これらを組み合わせた限界的消費税改革を検討する余地も残されていると考えられる。