2012 年 8 巻 p. 216-233
本稿では,わが国における都道府県レベルのパネル・データを用いて,公的支出が地域の経済成長に対して有益な効果を与えているかということについて,Barro(1991)による成長回帰をベースに動学パネルの手法を用いて明らかにした。実証分析から得られた主な結論は,以下のとおりである。①地域間経済収束(β-convergence)が成立していること,②社会資本ストックは地域経済成長にプラスの影響を与え,スピルオーバー効果が認められること,③公共投資は必ずしも地域経済成長には有意な影響を与えていない可能性があること,④政府消費は地域経済成長に負の影響を与えていることである。したがって,わが国の公的支出(公共投資や政府消費)は必ずしも長期的な地域の経済成長に対しては有益なものにはなっていない可能性があることを指摘できる。