2013 年 9 巻 p. 191-210
オランダにおける2001年税制改革では,3つの所得分類に課税するボックス課税と社会保険料から減免可能な給付付き税額控除を導入した。ボックス3にみなし課税が導入されたことで資本所得の分離課税化が改革の中心として捉えられてきた。しかし,この改革が成立過程においてどのように正当化され成立したのかについては,論じられてこなかった。本稿では,同改革がどのように議論されたのかを政治過程分析から明らかにし,どのような租税制度として結実したのかを制度分析から明らかにすることを試みた。その結果,同改革は労働者に対する租税負担の軽減策こそが改革の主要な課題であり,所得階層ごとへの配慮だけでなく,同時に租税制度の内在的な問題をも克服しようとしたものであることを明らかにする。