哲学
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質と量について
高柳 茂
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1957 年 1957 巻 7 号 p. 55-61

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抄録

近代的形式論理学の最近の著しい発展に刺戟されたことも一つの原因に数えられようが、唯物弁証法もその歴史的遺産を再検討し、自己の論理形式を一層発展させようとする気運が近頃高まって来たように思われる.唯物弁証法が「思惟及び現実の論理」としての力を喪わない為にも、諸科学の発展に応じた諸原則の展開が常に試みられてゆかねばならない.
ところで近代的な弁証法は伝統的形式論理学の内容的空しさから脱却し、その無力を克服する為に、近代的形式論理学の方向とは異ってカテゴリーの論理的価値を重視し、その批判的考察を自らの論理的主題に大きく取り上げた点に一つの著しい論理的特性を持つと考えられよう.唯物弁証法も、このドイツ観念論特にヘーゲルが試みた課題の成果を批判しつつ、又幾多の点で基本的に継承しているが、所謂「量質転化の法則」も受け継がれた主要なものの一つである.
この小論は「量質転化の法則」に対するサルトルの批判から出発し、苦干の問題点を取り出した上で二三の弁証法的思想家の見解に対比しつつ検討を加え、質と量のカテゴリーの多義牲に少しでも光を与えることを目的とする.

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