静脈学
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原著
膵・胆道癌に対する門脈切除再建
中尾 昭公
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2000 年 11 巻 4 号 p. 289-293

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抄録

1981年より門脈カテーテルバイパス法を用いて膵・胆道癌を積極的に切除してきた.門脈切除再建時の門脈うっ血や肝動脈同時切除再建時の肝阻血にも安全に対処してきた.1981年7月より2000年5月までに門脈切除を施行した症例は170例であった.術死は10例(5.9%)に認められたが,前半の10年は96例中9例(9.4%),後半10年では74例中1例(1.4%)に低下した.死因は術後門脈血栓によるものも認めたが,門脈切除に加えて主要動脈切除再建例における動脈血栓や膵腸縫合不全に起因した腹腔内出血などであり,門脈切除再建そのものは安全な術式として確立された.膵癌症例においては積極的な門脈合併切除によって,手術切除率は著明に上昇したものの依然として予後は不良である.切除例の検討から膵周囲剥離面における癌浸潤(EW)を陰性にすることが重要で,門脈切除はEWを陰性にするために適用される.術後のQOLを悪化させるのは門脈切除によるものでなく,上腸間膜動脈周囲神経叢の全周郭清が原因であった.

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