2004 年 15 巻 5 号 p. 397-402
これまで稀とされてきた内頸静脈血栓症の3例を経験した.症例1は22歳女性,中心静脈カテーテル留置の既往があり右内頸静脈内に血栓を認めた.症例2は44歳男性,左頸部の腫脹に対するCT検査で左内頸静脈の血栓閉塞を認めた.症例3は76歳男性,咽頭癌に対する放射線療法後の経過観察中に左内頸静脈内の血栓形成を認めた.症例1と症例3は抗血小板剤の投与を行い,症例2は抗凝固療法を行い外来で経過観察とした.症例1は血栓が消失し,症例2と症例3では変化はみられていない.経過中いずれの症例も肺塞栓症を疑わせる所見はなかった.内頸静脈血栓症は中心静脈カテーテルの長期挿入例,外傷,頸部の感染や悪性腫瘍に合併した症例の報告があるが本症例もこれらの要因を有していた.予後に関して肺動脈塞栓や深部静脈血栓症の再発が見られたとの報告もあり注意深い観察が必要である.治療は保存的治療を,まず行い外科的治療の適応には慎重を要する.