鼠径部手術後の難治性リンパ漏に対し,大網充填併用腹膜開窓術による腹腔へのドレナージが有効であった2例を経験した.症例1は87歳,男性.閉塞性動脈硬化症に対する人工血管バイパス後3年目に左鼠径部にリンパのう胞が発症した.数回の穿刺吸引・圧迫治療や癒着療法を行うも再発したため,リンパ液の腹腔への誘導と人工血管の感染防止を目的に,大網を有茎に作成し誘導,治癒し得た.症例2は77歳,男性.鼠径部リンパ節の生検後にリンパ漏が発症,数回の再閉創術や持続陰圧吸引を行うも再発したため,有茎大網を右鼠径部に誘導した.術後速やかにリンパ液の漏出は消失,術後4年の経過は良好である.大網充填併用腹膜開窓術は難治性リンパ漏に対する,侵襲的ではあるが有効な治療法の一つである.