抄録
要約:不全穿通枝(IPV)は慢性静脈不全による皮膚症状発現に関与し,再発静脈瘤の原因としても重要で,これに対する正確な診断と系統的な治療方針が重要である.IPVは伏在静脈本幹と直結するものとそうでないものに分かれる.2010 年2 月~2013 年6 月の446 例632 肢の下肢静脈瘤手術症例に術前静脈エコーを行い,より正確なIPV の診断を目的に,逆流負荷テストを工夫した.前者のIPV については,ストリッピングの創をIPV 連結部におき,IPV を結紮切離し(31 肢),後者のIPV は,皮膚症状のない部位には皮切IPV 切離(98 肢110 箇所),皮膚症状のある部位のうち,浅後方筋コンパートメントにあるものに内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS,91 肢)を行い,それ以外やSEPS困難例にはエコー下フォーム硬化療法(2 肢)を行った.全例で合併症なく良好に経過し,とくに23 肢の潰瘍例ではSEPS 後の一次治癒率100%,再発率4.3%,暫定治癒率100%と良好であった.正確なエコー診断に基づいた当院のIPV に対する治療方針は妥当なものであると考える.