静脈学
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症例報告
過膨張膀胱による一過性右下肢リンパ浮腫の1 例
家村 順三神原 篤志山本 芳央
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2015 年 26 巻 4 号 p. 285-288

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抄録

要約:症例は89 歳,男性.約1 カ月前から右下肢の高度腫脹が出現し,深部静脈血栓症の疑いで紹介された.右下肢全体に著明な腫脹を認め,下腿最大周径は右40 cm,左32 cm であった.下肢エコーでは深部静脈に血栓を認めず,静脈血流速度の低下も指摘されなかった.エコー画像,外観や触診からリンパ浮腫と診断した.リンパ流障害の原因究明のため腹部単純CT を施行したが骨盤腔内に腫瘍性病変はなく,リンパ節腫大も認められなかった.ただし,膀胱の過膨張(残尿1500 ml),左(健肢側)の腎盂,尿管の拡張が見られた.下肢腫脹に対しては圧迫療法を開始しリンパマッサージを予定した.尿閉に関しては泌尿器科で神経因性膀胱と診断され,バルーンが留置された.5 日後に初回リンパマッサージのために来院した時には下肢腫脹は完全に消失していた.過膨張した膀胱が右下肢のリンパ流障害の主因であったと考えられる,まれな病態と経過であった.

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