静脈学
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症例報告
血栓性静脈炎を伴う下肢静脈瘤に対して血管内焼灼術を行い深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症を起こした1 例
仁科 洋人西村 克樹谷嶋 紀行
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2016 年 27 巻 3 号 p. 331-334

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抄録

症例は72 歳,女性.右下肢静脈瘤および右下腿部痛みを伴う腫瘤を主訴に来院された.既往として,7 年前に左下肢の血栓性静脈炎があった.右下肢静脈瘤,右下腿部血栓性静脈炎の診断で,受診翌日に右大伏在静脈血管内レーザー焼灼術を施行した.術翌日,術後8 日での超音波検査にて大伏在静脈・大腿静脈接合部はEHIT1 の状態であり,血栓性静脈炎の伸展はなかった.治療後に1 週間のみ非ステロイド性鎮痛薬を使用したが,血栓性静脈炎部および血管内位焼灼部の痛み自制内に改善していたため,弾性ストッキング着用および歩行励行とし経過観察していた.術後21 日目より右下腿部がむくみ始めたが,痛みは軽快していたため,弾性ストッキングを着用して経過をみていたとのことであった.術後29日目に来院されると右下肢は浮腫んでおり,超音波検査・造影CT 検査をすると,右下肢深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症であったため,入院加療とした.採血検査で血栓性素因は認めなかった.血栓性静脈炎を伴った下肢静脈瘤診療において,併存しうる深部静脈血栓症や背景因子を調べることはもとより,慎重に経過をみながら治療方法を検討するべきであり,治療後も下肢や胸部の症状に注意しながら,通常より頻回に超音波検査を行うなど柔軟な対応が必要と思われる.

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