2016 年 27 巻 3 号 p. 405-412
われわれは,術前超音波検査により下腿無症候性深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)合併と診断した下肢静脈瘤患者で以下の条件を満たす28 例30 肢に対して手術(抜去術または高位結紮術)を施行した.条件は:①伏在型静脈瘤,②無症候性DVT が,術前に経時的に悪化していないことが確認できた,③背景に凝固亢進状態(血栓性素因陽性,悪性疾患等)を認めない,④局所麻酔下に手術が可能(術後不動状態とならない),⑤患者が下肢静脈瘤手術を希望し,かつ,無症候性DVT という概念をしっかり理解できる,だった.下腿無症候性DVT の91%はヒラメ筋静脈血栓で,DVT と診断後,DVT 増悪がないことを確認し手術を施行した.術後のDVT 再評価において,25 例7 肢の血栓は変化なく,3 例3枝では血栓は退縮した.本検討における条件を満たす症例においては,下肢静脈瘤手術は安全に施行し得る可能性が示唆された.