静脈学
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原著
慢性血栓塞栓性肺高血圧症を発症した精神疾患症例に対する外科治療成績の検討
杉山 佳代鈴木 隼小泉 信達佐藤 雅人荻野 均
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 28 巻 1 号 p. 83-89

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抄録

精神疾患症例において,静脈血栓塞栓症が発症しやすいことが知られている.当院で肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)を行った慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)症例で精神疾患を合併していた症例について検討した.全30例のうち精神疾患症例は3例(10%)で,内訳は統合失調症2例(症例1, 2),双極性障害1例(症例3)であった.いずれも不動,長期臥床などの明確なエピソードはなかった.3例中2例に,血栓誘発作用との関連性が指摘されているセロトニン・ドーパミン受容体拮抗薬が投与されていた.全ての症例にPEAを施行し,全ての症例で肺高血圧は著明に改善した.精神疾患症例において術後死亡は無く,術後に心肺補助装置や気管切開を要した症例も無かった.しかし,3例中2例(67%)において術後せん妄がみられた.また,精神疾患非合併症例においても3例に術後せん妄を認め(11%),精神疾患症例と比較すると少ない傾向であったが,有意差は認めなかった(p=0.07).また,全てのせん妄症例とせん妄を認めなかった症例における循環停止時間に有意差は認めなかった(p=0.22).精神疾患の合併は術後のせん妄発症に注意する必要があるが,CTEPHの臨床経過やPEAの治療成績に有意な危険因子とはならなかった.

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