われわれは悪性腫瘍合併VTE患者のうち遠位型DVTの患者背景,経過や治療に対する結果を検討した.対象症例は2010年から2015年までの当科および循環器内科に紹介された悪性腫瘍を伴う新規VTE症例175例のうち,遠位型DVTの69例とした.このうちPE合併は15例(22%)であり,浮腫,疼痛などの有症状は16例(23%)であった.PEを合併した15例は全例に抗凝固療法が行われた.PE非合併例では有症状16例のうち13例に,無症状の43例のうち22例に抗凝固療法が行われた.経過中,19例に血栓の消失が見られ抗凝固療法を行った群に血栓の消失が多く見られた.また3例に血栓の進展(内2例はPE)が見られた.この3例はいずれも継続して担癌状態が続いていた.以上の経験から悪性腫瘍を伴う遠位型DVT症例に対しては担癌状態が続く間は抗凝固療法の継続が必要であると考えられた.