静脈学
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原著
当院血管外科で診療したBaker Cyst(ベーカー囊腫)の検討
内田 智夫
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 29 巻 3 号 p. 399-403

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抄録

Baker cyst(ベーカー囊腫)は主に整形外科で診療する疾患だが,血管外科医が下肢血管疾患の診療中に偶然発見することもあり適切な対応が必要である.そこで当科で2009年から2017年までに診療したベーカー囊腫について報告する.深部静脈血栓症が疑われた患者310例中6例(1.9%),下肢静脈瘤患者2,135例中13例(0.6%)にベーカー囊腫が発見された.深部静脈血栓症の疑い6例のうち4例はベーカー囊腫破裂と診断し1例は残存した囊腫に対して穿刺吸引を行った.他の2例は破裂を伴わないベーカー囊腫で穿刺吸引を行った.下肢静脈瘤患者のうち8例は大伏在静脈瘤で,いずれも同側にベーカー囊腫を認めた.そのうち1例に血管内焼灼術と穿刺吸引,1例に抜去術と穿刺吸引,1例に穿刺吸引が行われた.下肢静脈瘤患者のうち残りの5例は非伏在静脈瘤で,このうち2例に穿刺吸引を行った.いずれも症状は改善し感染などの合併症は生じなかった.吸引のみでは再発がありうることを説明したうえで症例によっては,血管外科医もベーカー囊腫に対して穿刺吸引処置を行うことは許容される行為だと考える.

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