2020 年 31 巻 3 号 p. 73-76
左総腸骨静脈閉塞症に対して,大腿–大腿静脈交叉バイパス術が有効であった症例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.症例は79歳女性.1年前から左下肢腫脹あり,6カ月前から発赤を伴い,左下肢疼痛が生じたため受診.身体所見は左下腿に色素沈着を認めた.下肢周囲径は下腿部で5 cm, 大腿部で8 cmの左右差を認めた.Dダイマー値は正常値であった.超音波検査では,左下肢静脈に逆流所見なく,左腸骨静脈血栓症を認めた.造影CTでは,左内腸骨動脈から動静脈瘻の所見と左腸骨静脈閉塞を認めた.動静脈瘻に対してステントグラフト内挿術施行し,左下肢痛は軽快した.しかし,術後5カ月で左下肢痛が再燃したため,大腿–大腿静脈交叉バイパス術を施行した.術後左下肢痛は軽快し,術後8カ月で下肢周囲径に左右差を認めなくなった.現在術後3年経過良好である.