2020 年 31 巻 3 号 p. 77-82
下大静脈フィルター(inferior vena cava filter: IVCF)は静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)治療の補完医療機器として汎用されてきたが,IVCFの傾斜や位置移動,脚の穿孔といった合併症が懸念される.とくに永久留置となった場合には,これらの合併症に加えてIVCFの破損やIVCF血栓閉塞にも注意しなければならない.そのため,現在ガイドラインでは,IVCF留置に際して回収可能型IVCFの選択かつ最低限の留置期間にするよう提唱されている.今回,急性VTEの診断で留置したIVCFが永久留置となり,ワルファリンで抗凝固療法を継続していたにもかかわらず,留置後7年目にとくに誘因なくIVCF血栓症を発症し,抗凝固薬をリバーロキサバンに変更後約1カ月でIVCF内の血栓が消退し得た1例を経験したので報告する.