2010 年 72 巻 3 号 p. 214-219
ダゲレオタイプはその繊細な表面と環境に敏感な理由から,保存の上でハウジングが重要視される.ハウジングとはこの場合,作品の保護を目的とした額装,収容のシステムを指すが,それ自体が作品の一部となっていることが多い.従って,修理を行う場合は制作された時のハウジングの装飾様式の歴史的価値や特徴を考慮しなければならない.ここでは東京都写真美術館所蔵の2点の作品のケーススタディを通して,それぞれのコンディション及びハウジングに生じている様々な問題を見極め,何を残して,何を新しくするのか,新たなハウジングの目的と方法,修理の際の注意点などを述べた.新たなハウジングが施されたダゲレオタイプは,環境からの影響を抑えることができ,そのハンドリング,展示,保管をより安全に行うことができる.