2010 年 73 巻 1 号 p. 6-11
ものとしての本それ自体が学術的・文化的価値を有する貴重書のデジタル化は,ページごとにデジタル画像を取得する方法で行われ,そうして得られる全ページ分のデジタル画像群はデジタルファクシミリと呼ばれている.各ページ画像は高度な研究利用にも適する高い品質や信頼性を持つべきであり,それは文化財としての貴重書の代替保存の観点からも重要である.本報告では,慶應義塾大学HUMIプロジェクトが特製ブック・クレイドルの開発などによって確立してきた貴重書のページ画像の撮影手法を紹介し,撮影によって得られたデータからデジタルファクシミリを制作するための手順について概説する.