順天堂医学
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原著
正常および老人性核白内障水晶体切片の蛍光, 吸収スペクトルの研究
吉田 博
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1982 年 28 巻 4 号 p. 529-537

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抄録

人水晶体が蛍光をもち加齢とともに増強することは良く知られているが, その分布はほとんど報告がない. 今回は蛍光強度および吸収度分布とその特性を正常および老人性核白内障水晶体で検討した結果を報告する. 正常人水晶体と, 混濁と核硬化の程度により分類した老人性核白内障水晶体を0.5mmの薄切り切片として, アミンコ社自記分光光度計と日立社蛍光分光光度計で蛍光および吸収測定を, オリンパス社マルチ測光顕微鏡で蛍光強度分布と吸収度分布をおこなった. 紫外部吸収スペクトルでは正常人水晶体の280nmの吸収極大は, 核白内障進行とともに変化はないが, 340nm-390nmの長波長側に吸収極大が形成された. 励起光395nmにおける蛍光強度も正常人水晶体で示す465nmの極大は, 核白内障形成とともに減少していくと同時にやや長波長の500nmに新しい吸収極大が表われ, 495nmに等放射点を形成した. 励起光400nmにおける蛍光強度は正常水晶体核部から次第に核白内障の進行につれて核部周囲に強く分布した. 紫外部および可視部吸収度分布は核部中心に変化がみられた. 正常人水晶体で低い吸収を示す核部は, 核白内障の進行とともにその吸収度を増し逆に山を形成した.

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© 1982 順天堂医学会
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