順天堂医学
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原著
胃線状潰瘍の臨床的ならびにX線学的研究
-とくに体部, 噴門部潰瘍について-
鎗田 正
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1987 年 33 巻 4 号 p. 553-562

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抄録
1968年10月より1979年12月までの間に順天堂大学消化器内科で検査し, 胃切除を施行した線状潰瘍71例74病変の, 臨床的事項・検査所見・病理学的所見を検討した. 特に, 体部・噴門部の線状潰瘍30例32病変の, X線検査所見上の変形の解析を行った. 非綿状潰瘍切除例に比較すると, 線状潰瘍例の病悩期間は平均6.9年と長く, 切除理由には難治・再発, 吐・下血が多かった. 線状潰瘍例中でも, 5年以上の病悩期間のある症例の潰瘍は, 病悩期間3-6カ月の症例より潰瘍の長さが有意に長かった. 経過観察例では, 55例中13例 (23.6%) が無症状で潰瘍が悪化した. 同じく13例に症状の再燃があり, 12例に潰瘍の再燃を認めた. 経過検査は2-4カ月ごとに行うべきであろう. 癌合併・併存率は, 線状・非線状とも約24%であった. 二重造影による体部・噴門部の線状溝描出率は, 初回X線検査では75.0%, 術前精密検査では100%であった. 体部・噴門部線状潰瘍による胃変形の種類と強さは, 潰瘍と小弯との関係と長さにより異なる. 小弯と交わる線状潰瘍で長さ30-35mmでは, 小弯に軽微な変形が出没する. 35-45mmでは小弯の弱い変形が恒存する. 42mm以上で大弯への影響が現われ, 大弯変形が出没する. 45mm以上で小弯にU字型変形が恒存し, 病変の92.9%で大弯の弯入も恒存し, 全体変形としてB型を呈する. B型を呈する病変では, 潰瘍の長さと切除胃の横巾の比は0.33より大であった. 小弯と交わらない線状潰瘍では, 弯側から10mm以内では変形が強く恒存し, 10-20mmでは変形が動く. 変形を利用すると, 体部・噴門部線状潰瘍のX線正診率は術前で12.5%改善し, 見直しで96.9%である. 以上により, 内視鏡検査を超える正診率の改善をもたらした.
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© 1987 順天堂医学会
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