順天堂医学
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第10回都民公開講座「中高年を健康に生きる」
キレイはこころを元気にする
手塚 圭子
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2002 年 48 巻 3 号 p. 343-347

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抄録

老人ホームでの化粧の効果は, 笑顔のない人に笑顔が生まれたり, コミュニケーションのきっかけになって社交的で積極的になったりと, 精神面・社会性の面でプラスの効果が報告されている. 身体においても, 免疫機能を示すNK細胞の活性上昇が認められるなど, 身体的に健康になることも明らかになってきている. 外見はこころに, さらに身体の健康にまで影響を及ぼすことを示す例だが, 化粧だけでなく, 服装やヘアスタイルなどの外見も同様の効果がある. 服装により, 着たときの気分が変わることは誰でも経験がある. 女性がパンツルックになると気分的に活動的になる, または和服を着たときには, 逆にしとやかに優しい気持ちになるな ど, 服装もこころに影響を及ぼす. こころも長い間にはその人の外見を形成する. いつも悩んだり, 苦しい・いやな気持ちでいると眉間にシワがきざまれたり, 反対にいつも明るく優しい気持ちでいると柔和な顔になってきたりなど, こころが顔を形成する. 身体の手入れをしてキレイにする専門家はエステティシャンであるが, フランスでは病院や老人ホームなどで, 入院患者や入所者にエステティックを施すソシオエステティシャンと呼ばれる専門家が活躍している. ソシオエステティシャンに身体の手入れをしてもらうことで元気を回復し, 社会復帰を早めることが, 明らかになっているためである. このように, われわれは健康を求めるとき, 身体の健康状態ばかりでなく, 精神的・社会的状態も考慮すべきで, この意味から身体のキレイは精神的・社会的状態を良好に保つためのアプローチのひとつであると考えられる.

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© 2002 順天堂医学会
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