抄録
目的: 大腸mp (muscularis propria) 癌は進行癌であるものの比較的予後良好な大腸癌であるが, ときに他臓器への転移を認め, 予後不良な一群が存在する. このような他臓器転移をする大腸mp癌がどのような性質を有しているかを間質の線維化の面から検討した.
対象: 1996年-2002年に当科で経験した大腸mp癌手術症例78例を対象とした.
方法: 腫瘍最大割面像において免疫組織化学染色を施行し, α-smooth muscle actin (α-SMA) 陽性, Desmin陰性, CD34陰性を筋線維芽細胞とし, その分布・増生を間質の線維化とした. 画像解析装置を用い, 間質の線維化面積を定量化し, 断面積に対する線維化面積の比を間質の線維化率とした.
結果: 大腸mp癌他臓器転移症例は8例 (8/78例, 10.2%) にみられた. 他臓器転移群の間質線維化面積は16.2±9.6mm2, 無転移群は14.0±9.0mm2で差は認められなかった. また, 他臓器転移群の間質線維化率は22.9±8.0%で, 無転移群の17.3±7.5%と比べ有意に高値であった (p=0.043).
結論: 大腸mp癌の他臓器転移群は無転移群に比べて間質の線維化率が高値であった. 大腸癌間質の線維化率は大腸mp癌予後不良因子となる可能性が示唆された.