順天堂医学
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原著
全身性エリテマトーデス患者における副腎皮質ステロイド薬の副作用発現と背景因子の関連についての検討
箕輪 健太郎森本 真司高崎 芳成玉山 容碩戸叶 嘉明
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2010 年 56 巻 3 号 p. 268-273

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抄録

目的: 長期間ステロイド薬を投与した全身性エリテマトーデス (SLE) 患者における副作用が, どの時期で発現しやすいかを投与開始年齢, 初回投与量との関連について検討するとともに, 副作用予防の観点から, ステロイド薬投与開始後に発現した生活習慣病と動脈硬化性疾患発症との関連についても検討した. 対象: 1987-1997年の間に当科へ入院し, 観察期間内でステロイド薬の増量を行わなかったアメリカリウマチ学会の診断基準を満たすSLE患者116例 (男性14例, 女性102例) を対象とした. 結果: ステロイド投与開始年齢との関連では脂質異常症, 大腿骨頭壊死の発現頻度が若年群で有意に高く, ステロイド薬の初回投与量との関連では脂質異常症と, 入院を要する感染症の発現頻度が高用量群で有意に高かった. さらに, ステロイド薬の副作用として発現した複数の生活習慣病を有する例では虚血性心疾患を発症する例が有意に多く認められた. 結論: SLE患者において長期ステロイド薬投与による副作用として発現する脂質異常症は, ステロイド投与開始年齢が若年で高用量の症例に多いため, このような症例では早期から脂質異常症に対する予防が必要と考えられた. またSLE患者においても, ステロイド薬投与による複数の生活習慣病因子を予防することが, 動脈硬化性疾患の発症予防に重要であることが示唆された.

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© 2010 順天堂医学会
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