順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
大腸SM癌に対する腹腔鏡下切除術の検討
高 志剛田代 良彦永易 希一丹羽 浩一郎小野 誠吾石山 隼杉本 起一秦 政輝神山 博彦小見山 博光高橋 玄柳沼 行宏小島 豊五藤 倫敏田中 真伸仙石 博信奥澤 淳司冨木 裕一坂本 一博
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 56 巻 6 号 p. 572-580

詳細
抄録
目的 : 大腸SM癌に対する腹腔鏡下大腸切除術の短期的予後および治療の妥当性について検討した.対象と方法 : 当科で1994年10月から2006年12月までに大腸SM癌に対して施行した腹腔鏡下大腸切除術症例に関して, 患者背景・手術成績・病理学的成績・治療成績を検討した. 結果 : 腹腔鏡下大腸切除術を施行した大腸SM癌は120例であった.性別は男性40例, 女性80例で, 平均年齢は59歳 (31-80歳) であった.術式は結腸部分切除術28例, 回盲部切除術8例, 結腸右半切除術10例, S状結腸切除術40例, 前方切除術16例, 低位前方切除術17例, 腹会陰式直腸切断術1例であった.平均手術時間は227分 (147-535分) で, 術中平均出血量は33ml (2-910ml) であった.術中に重篤な合併症は認めなかった.開腹移行を3例 (2.5%) に認めた.術中死亡例や術後30日以内の死亡例は認めなかった.合併症に関しては縫合不全2例 (1.7%), 腸閉塞6例 (5%), 創感染4例 (3.3%), 再手術4例 (3.3%) を認めた.郭清したリンパ節は平均11個 (3-40個) で, そのうち106例 (88%) はリンパ節転移を認めなかった.リンパ節転移を認めた14例のうち1例 (0.8%) が1個, 1例 (0.8%) が2個, 2例 (1.7%) が3個のリンパ節転移を認めた. 郭清リンパ節個数はリンパ節郭清度と有意な関係であったが, リンパ節郭清度は出血量および手術時間とは関係せず, リンパ節郭清度は術中および術後合併症との有意な関係は認めなかった.平均術後観察期間は4.8年であり, その間に局所およびポート挿入部の再発は認めなかった.遠隔転移は3例 (2.5%) に認め, すべてが肺転移であった.3年間の無再発生存率は99.2% (120例中119例) であった. 結論 : 大腸SM癌に対する腹腔鏡下大腸切除術は安全で効果的であった.大腸SM癌に対する高次のリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下大腸切除術は短期的予後に影響を及ぼさなかった.
著者関連情報
© 2010 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top