順天堂医学
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特集 第325回順天堂医学会学術集会
先天性横隔膜ヘルニアの病態と治療
岡崎 任晴
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2011 年 57 巻 4 号 p. 345-350

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抄録

先天性横隔膜ヘルニア (CDH) は, 胎生8週ごろに形成される横隔膜の形成不全により生じた種々の欠損部位から腹腔内臓器が胸腔内に脱出する内ヘルニアである. 近年の周産期医療の進歩にもかかわらず治療に難渋する疾患で, 救命率は60-70%にとどまり, 新生児外科領域の中で最も救命率の低い疾患の一つである. 予後は, 本症に特徴的な病態である肺低形成と肺高血圧の程度により左右されるが, これらを出生前あるいは出生直後に直接測定・評価することは困難である. われわれは以前より, 胎児あるいは出生直後の肺動脈 (PA) 径やPA血流の状態に注目し, CDH患児の管理・治療を行ってきた. 特に, 2002年以降は, 胎児期から出生後のCDHの治療をプロトコール化し, 統一した治療のもとで, 肺動脈 (PA) 径やPA血流の状態と, 臨床経過や予後との相関を検討してきている. 本稿では, (1) プロトコール化治療と治療成績の向上について, (2) 妊娠後期以降のPA径の発達および出生時のPA径と予後と相関について, (3) われわれが考案した新しい術式として, 広範囲の横隔膜欠損に対する人工膜を用いない修復法 (Toldt's fascia flap法), (4) 胸腔鏡下手術の導入とその適応の検討, などを報告する.

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