2001 年 13 巻 1 号 p. 51-60
要旨:ゴルジ体から小胞体系(ER系)への逆行輸送が植物細胞でも存在する証拠を得る目的で、ER系とゴルジ体が近接している藻類細胞二種(単細胞緑藻Scenedesmus acutusとBotryococcus braunii) を用い、brefeldin A(BFA)がゴルジ体とER系の微細構造に及ぼす影響およびBFA処理によってゴルジ体標識酵素のチアミンピロフォスファターゼがER系に移行するか否かを細胞周期のいろいろな時期について調べた。その結果、BFAによって誘導されるゴルジ体からER系への逆行輸送は哺乳類の細胞だけに特有な現象ではなく、植物細胞にも共通の現象であることが示唆された。この逆行輸送は、二種の藻類ともに、間期の細胞では誘導されたが、分裂期の細胞では誘導されなかった。更に、この逆行輸送にはアクチンフィラメント系が関与し、微小管系が関与している哺乳類の細胞とは異なる機構であることが判った。