2018 年 9 巻 1 号 p. 45-50
小児期発症の全身性エリテマトーデス(SLE)は,成人と比べて急性かつ重篤な経過をたどる. 我々は,既存の免疫抑制療法に抵抗性で,再燃に伴い腎機能が低下し,寛解導入に難渋した症例 を経験したので報告する.症例は11歳男児,初回の腎生検でISN/RPS分類Ⅳ-S(A)であり,ステ ロイドパルス療法とミコフェノール酸モフェチル(MMF)に加え,経静脈的シクロフォスファミド 療法(IVCY)を併用したが寛解に至らなかった.治療開始7 か月後にSLEが悪化し,ステロイドパ ルス療法,タクロリムス,ヒドロキシクロロキンを追加した.その後の腎生検でほぼすべての糸 球体に半月体または巣状硬化を認めるⅣ-G(A/C)と悪化を認め,免疫吸着療法とリツキシマブの 投与を行い,再燃から約10か月後に尿所見は正常化した.男性,若年発症,重症ループス腎炎の 合併はいずれもSLEの予後不良因子とされている.小児期発症SLEにおいて,男児かつ重症ループ ス腎炎合併例では早期に寛解導入を目指すべきであり,マルチターゲット療法や免疫吸着療法, リツキシマブ投与も治療の選択肢になり得ると考えた.