フィナンシャル・レビュー
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EUにおける付加価値税の課税権配分についての覚書
―第六次指令時代の欧州司法裁判所の諸判例からみる研究課題―
藤原 健太郎
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2024 年 156 巻 p. 71-94

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抄録

 付加価値税(VAT)の先達として我々は欧州連合(EU)のVATを多く参照してきた。そこから学ぶべきものと学ぶべきでないものとが当然あるだろう。とはいえ,EUの歴史の中で付加価値税を位置づけたとき,当然EUが追求する理念や政治的事情によってそれは規定される。

 本稿は,EU加盟国間での付加価値税の課税権配分をテーマとする。その際,共同体法の実現主体の一つである欧州司法裁判所の動向に着目する。その判例,就中Fixed Establishment及び本店支店間取引についてのそれらを概観し,整理することで,多国籍企業に対する付加価値税の制度設計を論じる土壌を豊かにすることを目指す。具体的には,課税権配分という大きなテーマに同裁判所が如何なる処理を与えてきたのかを観察する。

 その作業は,将来志向ではなく,むしろ,過去を振り返るものであり,したがって,即効性のある提言を日本法の文脈にもたらすものではない。しかし,多国籍企業についての付加価値税の課税のあり方を研究していくにあたっての課題も少なからず認識される。国境を越えて事業展開する企業について,第一次的にはどこが課税権を有するのか,または,企業内部の取引をVATの世界でも考慮にいれるのか,などである。課税権配分というテーマについて所得課税とVAT双方にまたがる研究が必要である。

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© 2024 本論文著者
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