霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-68
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ポスター発表
採食場面におけるニホンザルの親子 -アカンボウ関係の地域間比較―青森県下北半島と鹿児島県屋久島
*谷口 晴香
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抄録

 ニホンザルのアカンボウは,春に生まれ,冬には自力で採食を行う必要がでてくる.アカンボウは処理のしやすい食物に採食時間を費やすため,母親間で食物利用が異なる.よって,アカンボウにとって母親が伴食相手として適しているとは限らないが,冬季に母親の存在は吸乳による栄養補給や体温保持の面で重要である.本研究では,母親の採食時に,アカンボウが距離や行動をどのように調整しながら自身の採食要求を満たしているのかを,生息環境が異なる 2地域を比較しつつ検討した.2008-2009冬季に落葉樹林帯に属し積雪がある下北半島,2010-2011冬季に照葉樹林帯に属す屋久島において,生後 7-11カ月のアカンボウとその母親 4組を対象に調査を行った.追跡個体は決めておき,観察者の視界内に両個体がいる場合は同時に追跡し,3分ごとに母子間距離,母子の活動,採食した場合はそれぞれの食物品目を記録した.そして,食物を,母親と比較して,アカンボウの採食時間が短い食物(Mother Food, MF),アカンボウの採食時間が長い食物(Infant Food, IF),母子間で採食時間に差がみられない食物(Common Food, CF),の 3つのカテゴリーに分類した.両地域共通して,母親が MFを採食時には,アカンボウは,母親から 5m以上離れることが多く,他の食物を採食していた.母親が IFや CFを採食時には,下北では母親の 5m以内で同じ食物を採食する傾向にあった.屋久島でも IFは下北と同様の傾向だったが,CFに関しては,母親から離れることが多く,母親との伴食はあまり見られなかった.おそらく母親への依存の程度の差が母子の伴食関係に影響を与えており,屋久島と比較し,食物条件が厳しく,寒い下北では,可能な限り母親と伴食を行うことで,保護を受けやすい距離に留まりつつ自らの栄養要求を満たしていたと考えられる.

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© 2013 日本霊長類学会
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