霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: P-212
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ポスター発表
北限に生息する野生ニホンザルにおけるシラミ卵の膠着状況:性・年齢に応じた地域差および部位差の検討
*石井 奈穂美*加藤 卓也*名切 幸枝*羽山 伸一*梶ヶ谷 博
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抄録

 霊長類のグルーミングの機能を検討する際は,グルーミング行動に影響を与える要因を考慮することが不可欠である.ニホンザル( Macaca fuscata,以下サル)では,シラミ( Pedicinus sp.)との密接な関係が示唆されており,シラミ卵数と体毛密度が比例することが報告されているが,卵数についてサルの性・年齢や生息地の違いを検討した研究はない.そこで本研究では,サルの体毛上のシラミ卵数について,性・年齢ごとの地域差・部位差を検討した.
 観察対象は,青森県下北半島において特定計画にもとづき個体数調整のために殺処分された野生のサルの皮膚とした.皮膚サンプルは性と年齢区分(Infant,Juvenile,Adolescent,Adult)に応じて分類し,実体顕微鏡により観察区画内(3cm 2)の卵を数えた.地域差について,観察個体の手の届く部位(左手首外側)の卵数を,福島県福島市に生息するサルと比較した結果,下北半島のサルにはより多くの卵が膠着していたが,Juvenile個体の卵数が多い点は両地域で共通していた.部位差について,同様の観察を手の届かない部位(腰部)で行った結果,手首に比べ少数ではあるが,Adult個体により多くの卵が膠着する傾向が見られた.なお,両部位において卵数に性差は認められなかった.
 地域により卵数が大きく異なっていた点については,体毛密度といった物理的要因を考慮すべきである.また,両地域の手首において Juvenile個体により多くの卵が見られたことは,歯の萠出等卵の除去を妨げる要因によるものであると考えられる.部位により,卵数および卵が多く見られる年齢区分に違いがあったことは,他個体から受けるグルーミングの影響によるものであると考えられる.
 以上より,サルのグルーミング行動に影響を与えると考えられるシラミ卵数は,地域・部位・年齢に応じて異なる可能性が示唆された.

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© 2013 日本霊長類学会
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