主催: 日本霊長類学会・日本哺乳類学会大会
ニホンザルの有害捕獲頭数は 1970年代から年々増え,1998年以降は毎年,年間1万頭以上の個体が駆除されている.捕獲により加害個体を除去することができれば,その個体による被害はなくなると考えられるが,従来の有害捕獲のほとんどは個体や集団を特定せず,目標捕獲頭数を曖昧にしながら実施していた.このような方法での被害軽減効果は疑問視されている.地域によっては個体群の絶滅も懸念されており,保全上の観点からも科学性・計画性のある対応が求められる.
一方,近年では,対象個体群の被害状況や生息状況を評価したうえで,被害を効率的に軽減するための計画立案のもと,群れ捕獲や部分捕獲,問題個体を識別して実施する選択的捕獲など,さまざまな手法による個体数管理を実践する地域も現れるようになった.
この自由集会では,こうした個体数管理を立案・実践している3地域から,それぞれの管理方針,目標設定ならびに選択された手法の成果や実践上の課題を報告する.
総合討論では,これらの報告をもとに,効率的な被害軽減にむけたニホンザル個体数管理の考え方を整理し,方法論の確立にむけて,今後必要となる効果検証の課題,個体数管理を進める上での課題を整理する.
1.「安定的個体群における個体数管理」
~群れ捕獲・部分捕獲・選択的捕獲の実践例~
清野紘典(野生動物保護管理事務所)
2.「絶滅危惧個体群における個体数管理」
~個体群の安定的維持と被害軽減~
森光由樹(兵庫県立大学 /兵庫県森林動物研究センター)
3.「被害対策を効率化させるための個体数管理」
~追い払いを効率化させる群れサイズの検討~
山端直人(三重県農業研究所)
4.合討論: ニホンザルの個体数管理~方法論の確立にむけて~