霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: A1-6
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口頭発表
歯の形態形成にもとづく進化要因の分析
*小澤 幸重
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抄録

 背景;演者は歯の形態形成を比較解剖学的に解析し,全ての歯が分節(集合)性,対称(平衡)性,周期(律動)性に基づいて理解できること,これらは体制の原則と一致し,かつミクロからマクロまで統一的に認められる普遍性の高い法則であることを報告してきた.そのなかで体制の対称性は非常に重要な要因であるが,対称性として理解が得にくいと考えられる頭.臀の対称性について昨年の本学会で発表した.今回は歯の分節を系統発生的に解析し時間軸を加えると共に,分節の分化様式について検討を加え,進化要因としての原則を議論したい.
 検討;哺乳類の歯の構造はおおまかに起源から系統発生的な要因に基づく分節が認められる.ここから象牙質の定義は顎骨弓の辺縁における上皮直下の分節としての硬組織であるという定義が生まれる.一方,歯冠の高まり(咬頭,切縁結節,尖頭など)や歯根は動物種,歯種によってそれぞれ別個に歯のどこからでも生じかつ対称的に分化するが顎骨の制約を受ける.いずれも分節が単位となり分化しあるいは消失する.また Osbornが三結節説で理解しようとしていた長鼻類やイボイノシシの歯の形態は,歯の分節の集合が単位としても分化することがあることを示している.このような現象は体内のいろいろな臓器に当てはまるものであり,そこから種の特異性が生まれ,体制全体の律動性から進化の要因となる,と推定される.以上の現象から,さらに嗜好性,親和性,相補性という概念が進化に必要である.以上の点を議論したいので諸賢のご検討を願うものである.

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© 2013 日本霊長類学会
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