霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: B18
会議情報

口頭発表
マカク(Macaca)の四肢プロポーションの比較:適応と系統発生
濱田 穣若森 参平﨑 鋭矢Suchinda MALAIVIJITNOND
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

マカク(Macaca)はアジアで熱帯域から冷温帯域まで幅広い生息地に適応放散した。同じ生息地で棲分けている種も多い。その一方で、マカクは他のオナガザル科分類群に比べて形態的に一般性を保存しているともいわれる。これらの実態を明らかにするためにマカクの四肢形態の量的比較を行った。材料と方法:3種群(sylvanus-silenus, sinica, fascicularis)、20種で、うち3種では亜種・地域集団を別に扱った(トクモンキーの生体計測データはCheverud el al., 1992によった)。他のオナガザル上科のいくつかを外群とした:African papionini 4属(Papio, Theropithecus, Mandrillus, Lophocebus)、Cercopithecus 4種、およびTrachypithecus 4種。頭胴長、尾長、上腕長、前腕長、大腿長、下腿長、手長、足長、手幅、足幅、拇指長、第3指長、第1趾長、第3趾長の12項目の生体計測値を用いた。頭胴長で身体サイズを比較し、体肢部サイズは頭胴長で基準化し、雌雄こみで比較した。結果と考察:異なる方向へ極端化する外群(Theropithecus, Cercopithecus, Trachypithecus, Papio, Mandrillus)に比べて、マカクは変異の中心部にある(一般的)。特に、四肢の相対的長さでは変異するが、熱帯域に分布するブタオザル・スラウェシマカク・カニクイザル・トクモンキー・ボンネットモンキーの12種がそうである。これらに比べてバーバリー、シシオザル、インド産アカゲザルとタイワンザルでは前肢が後肢より短く(CercopithecusTrachypithecusほどではないが)、アカゲザルは指・趾が長い、ニホンザルは四肢が相対的に短く、手足幅が大きい;そしてアッサムモンキーとベニガオザルはPapioなどよりも前肢が長めであり、指趾が長い。これらの中高緯度地域に生息する種では、藪的環境・乾燥地・岩崖・地上性、および捕食圧への適応によって、種群での系統発生を基盤として、異なる条件の生息地へ位置的行動(枝上四足歩行、climbingやclambering、あるいは短距離galloping)を進化させたことを反映すると考えられる。

著者関連情報
© 2016 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top