霊長類研究 Supplement
第32回日本霊長類学会大会
セッションID: B20
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口頭発表
ニホンザル地域個体群の遺伝的構造:地域個体群の成立年代推定
川本 芳川本 咲江森光 由樹赤座 久明六波羅 聡
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抄録

【背景】鳥獣法改正によりニホンザルの管理(個体数調整)が加速した。捕獲圧が上がるなか、効果的な群管理の在り方を探るため「ニホンザルでどの個体群を優先的に残すか」を考える科学的根拠が求められている。地域個体群の『歴史性』、『遺伝的連続性』、『地理的連続性』を理解し、保全管理の管理単位を抽出することが緊急の課題になっている。【方法】今回は『歴史性』の研究結果を中心に発表する。ミトコンドリアDNA(mtDNA)非コード領域(939 bp)の塩基配列を145試料で比較し、ベイズ法を用いて系統樹分析を行った。年代推定ではふたつの事前年代推定値を外挿し、ソフトウェアBEASTにより各地の個体群の共通祖先(MRCA)配列の派生年代を推定した。【結果】シミュレーションで描いたコンセンサス樹形図は、主幹の先に異所的個体群が配置される典型的なDeep Gene Treeになった。また、主幹の分岐は寒冷期(氷期)に多いと推定された。mtDNAハプログループのMRCA推定年代は、西日本で最終氷期まえに遡る例が多いのに対し、東日本では最終氷期以降が多い。また、今回の分析により東日本では新たに5つの地域個体群の輪郭が明らかになった。古い起原の西日本の一部地域でも最終氷期以降にMRCAをもつ個体群を認めた。【考察】 mtDNAハプロタイプの分布で地域個体群の異所性が強調されるのは、一義的に母系が同所的に融合することがないためだと考えられる。従ってMRCAで分類できるmtDNAハプロタイプの分布は地域個体群の『歴史性』を保全管理に反映させるうえで有益な情報といえる。MRCA年代のちがいはニホンザルが後氷期(1万年以内)に東日本で分布拡大したと考える進化仮説を支持する。一方、西日本の一部で認めたMRCA年代が新しい地域では自然災害あるいは人為撹乱の影響が考えられる。

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© 2016 日本霊長類学会
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