霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: A20
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口頭発表
反復DNAの出現・移動・消失でもたらされるゲノムの大きな変化
*古賀 章彦平井 啓久
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抄録

同じ塩基配列の単位が縦列に繰り返すサテライトDNAが出現し,これが短期間に増幅してメガサテライトDNAになることがある。その結果として,系統関係は近いにも関わらずゲノムの構成は大きく異なるという状況が生じる。出現のほかに,染色体上の場所の移動,また消失も,ゲノムの構成の大きな変化をもたらす。染色体の構造の変化にもつながるため,種分化にも深く関わると推測される。霊長類では以下のような具体例がある。 [1] ヒト科のsubterminal satellite配列(反復単位は32塩基対。アフリカ大型類人猿の共通祖先で出現し,染色体端部で増幅。ゴリラ・チンパンジー・ボノボに見られる。ヒトでは消失。) [2] テナガザル科のalpha satellite DNA(171塩基対。セントロメアの主成分である反復配列が移動。Nomascus属とSymphalangus属の染色体端部で増幅。Hylobates属とHoolock属には見られない。) [3] テナガザル科のSVA因子(30-50塩基対。複合型レトロトランスポゾンであるSINE/VNTR/Alu因子の配列の一部が,Hoolock属のセントロメアで増幅。本来のセントロメア反復配列は,ほぼ消失。他の3属のセントロメアは本来の配列のまま。) [4] ヨザル科のOwlRep配列(187塩基対。ヨザル科Aotidaeが他の科と分岐した後に出現し,セントロメア周縁部で増幅。夜行性への移行と深く関連。) [5] ヨザル科のOwlAlp1配列(185塩基対。Aotidaeが他の科と分岐した後に,セントロメア反復配列の変異型が生じ,これが増幅。本来のセントロメア反復配列は機能を喪失。) [6] オマキザル属のCapA配列(約1500塩基対。Cebus属がSaimirti属などと分岐した後に出現して増幅。染色体の腕の中間部に大きなブロックを形成。)

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© 2017 日本霊長類学会
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